診療案内

NKT細胞標的治療
(RIKEN-NKT®)

現在のがん標準治療は、手術、抗がん剤、放射線の3つです。がんの部位と種類、進⾏度、転移の有無などを検討し、この標準治療の中から最適な治療法が実施されます。

しかし最近は第4の選択肢として、免疫療法が注⽬されています。 免疫療法には、ワクチン療法、サイトカイン療法、抗体療法、樹状細胞療法、活性化リンパ球療法など多くのものが知られていますが、これらの治療法の中でも新しいがん免疫療法が、NKT細胞標的治療です。

NKT細胞標的治療とは、がん細胞を殺し除去しようとする、身体が本来持っている免疫の働きを利⽤して、がんを治療する試みです。以下に挙げる6つの働きによって、がん細胞に対抗します。

樹状細胞を成熟化

「樹状細胞」には、がん細胞への攻撃部隊を構成している免疫細胞に対してがんの目印となる「がん抗原」を提示してくれる働きがあります。

この提示により免疫細胞ががん細胞を認識し、攻撃力を有したキラーT細胞となり、数を増やしてがんを攻撃することができるのです。

しかし、がんを患っている場合、がん細胞が作り出す免疫抑制細胞・物質の作用で、樹状細胞が成熟できなくなります。つまり抗原提示ができず、攻撃部隊が活動できなくなってしまうのです。

これに対抗するのが、NKT細胞が持つ働きのひとつ“樹状細胞の成熟化”です。がん細胞による樹状細胞への妨害を解除し、正常に抗原提示ができるようにします。

アジュバント作用

活性化したNKT細胞は、「IFN-ɤ(インターフェロン・ガンマ)」と呼ばれる物質などを放出し、NK細胞、キラーT細胞、マクロファージといったさまざまな免疫細胞を増殖・活性化させます。
免疫システム全体を活気づけ、がん細胞を攻撃するための士気を高めるのです。

こうした免疫システムの活性化作用のことを、「アジュバント作用」と呼びます。「アジュバント」は、ラテン語で「助ける」という意味を持つ言葉です。

がん細胞への直接攻撃

活性化したNKT細胞は、がん細胞を直接攻撃する役割も果たします。

通常、がん細胞を直接攻撃する免疫細胞として「NK細胞」「キラーT細胞」が働いていますが、免疫不全に陥っているがん患者の場合、どちらの細胞も機能していません。
こうした状況のなかで、NK細胞とキラーT細胞の両性質を兼ね備えたNKT細胞が活躍するのです。

ちなみに、NK細胞は目印(がん抗原)のないがん細胞に、キラーT細胞は目印を出しているがん細胞に働く免疫細胞ですが、NKT細胞はどちらの性質も持っているため、がん抗原の有無に関係なく攻撃できます。

さらにNKT細胞は、がん細胞なら必ず持っている別の抗原を探し出せる能力もあり、NK細胞やキラーT細胞が見逃したがん細胞も攻撃することができるのです。

免疫抑制を解除

がん患者の体内は免疫が抑制された状態にあります。

自己免疫疾患などの原因となる免疫の上がり過ぎを抑えるために存在する「抑制系の免疫細胞」を異常に増やすほか、あたかも正常細胞であるかのように装ったり、抗原を隠してしまうなどにより、免疫の攻撃力にブレーキをかけます。
このためこれら免疫抑制因子を取り除かないと、免疫システムが機能しないためがんを撃退できません。

そこで活躍するのが活性化NKT細胞。
この細胞は、がん細胞が作り出す免疫抑制物質をキャッチする受容体がなく、動きを封じられないうえ、がん細胞が免疫細胞の攻撃から自らを守るために細工した免疫抑制細胞を殺傷する働きもあります。

こうした活性化NKT細胞の働きによりさまざまな免疫抑制が解除され、免疫機能が向上するのです。

血管新生を阻害

がん細胞は、その増殖に必要となる栄養や酸素を得るために、がん組織に向けて新しい血管を造成します。この現象を「血管新生」と言い、これにより作られた血管を「新生血管」と言います。

がん細胞はこの新生血管を作るために、「血管新生因子」と呼ばれるたんぱく質を利用しており、なかでも重要な働きをするのが「血管内皮増殖因子(VEGF)」というサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質のこと)です。

活性化NKT細胞は、VEGFなどのサイトカインを放出できないように妨害することで、新生血管が作られるのを防ぎます。

長期の免疫記憶

活性化されたNKT細胞は、がん細胞に対する免疫記憶幹細胞を作ります。つまり、長期間にわたってがん細胞を攻撃できる免疫記憶が形成されるのです。
実際、マウスを使った実験では、肺において、9ケ月以上も免疫記憶が持続していることが分かっています。

「NKT細胞標的治療(RIKEN-NKT®︎)」は厚生労働省の定める先進医療Bとして臨床研究が実施された治療技術を基礎としており、国が定めた法律に則り、国の認定委員会を経て担当の厚生局により治療が認められています。

この治療法を、東海地方においては、野村医院で行えるようになりました。

NKT細胞標的治療(RIKEN-NKT®︎)の流れ

初診・血液検査を行い、治療を受ける事が可能かの適格性を判定します。

成分採血機を使用し、患者さんの血管から、3時間〜5時間かけて細胞培養に必要な成分(単核球)だけを取り出します。

採取された細胞は清浄度が十分に管理された細胞培養施設に運ばれ、別の細胞に分化・誘導された上で理研免疫再生医学によって製剤された糖脂質の化合物により刺激を与えられて目的となる細胞に変化します。その後、無菌検査・毒性試験含めて2週間で細胞培養が完了します。
(なお、この糖脂質の化合物は国が定めたGMPという基準で製造されており、理研免疫再生医学が独占的な製造・販売権利を持っています。)

細胞培養の状態・安全性の確認が終了した細胞は凍結保存され、当クリニックに輸送されます。
標準では患者さんへ2週間ごとに計4回、リンパ節の集まる部分に皮下注射での投与を行います。

予期される効果について

NKT細胞標的治療はすでに大学等の研究機関で臨床試験が行われ、進行性肺がんや頭頸部がんに十分な効果を示唆する結果が発表されています。
しかし、治療によって得られる効果は、患者様の病状や病態、血液状態などによって個人差が生じますのであらかじめご了承ください。

当クリニックでは、患者様が現在治療中(受診中)の病院にご協力をお願いし、効果判定に必要な検査データを収集し検証したいと考えています。今後も引き続き信頼のできる治療が提供できるように、患者様ごとに最適な投与法を行います。

NKT細胞標的治療は、理論的には全てのがん患者に行うことが可能な治療方法ですが、全てのがん患者で投与の結果が検証された治療法ではありません。
参考として、医師主導型治験として行われた、肺がんと頭頸部がんに対するNKT細胞標的治療の結果を提示します。

NKT細胞標的治療について、
お伝えしたいこと

01他の治療と並行して
受けられます

手術・抗がん剤・放射線の3つの「がん標準治療」や新たな「抗体治療」などの治療をすでに行っている、あるいは行う予定がある場合でも、「NKT細胞標的治療」は並行して受けることができます。 可能な限り、治療スケジュールに応じ、最適の投与時期や投与間隔を決めていきます。

02国の研究機関において
臨床研究が行われています

すでに大学等の研究機関で進行性の肺がんや頭頸部のがん(鼻や口、喉、あご、耳などにできる)の患者に対して臨床試験が行われ、一定の治療効果を示唆する結果が発表されています。
ただし、治療で得られる効果は、患者さまの病状や血液状態などにより、個人差は生じます。

03治療を途中で
やめることができます

当クリニックで「NKT細胞標的治療」の説明を受けて、同意すること、同意しないことを決めるのは自由で、拒否したことを理由に不利益な取扱いを受けることはありません。この治療に同意した場合であっても、治療の開始前後、培養の採血の前後にかかわらず、いつでもその同意を撤回でき、治療を中止できます。それを理由にその後の治療に不利益を受けることはありません。
ただし、細胞の培養開始後の撤回については、規定による細胞培養費用が請求されます。

04個人情報の保護について

当クリニックの個人情報取扱規定に基づき個人情報を保護します。患者さまを特定し得る氏名などのプライバシーに関わる情報が、ご本人の同意なく、他に提供されたり公開されたりすることはありません。名前などの個人情報は細胞培養委託先であるニューシティ大崎クリニック細胞培養加工施設とバイオアクセル株式会社等に提出し、情報共有することで細胞培養・保存取扱いなど細胞管理を厳重に行います。

05治療終了後の追跡調査への
ご協力をお願いします

「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年 法律85号)」により、治療終了後、一定期間の追跡調査が定められています。
治療後の副作用の有無と効果を追跡するため、「NKT細胞標的治療」終了後から5年間、当クリニックより、お届けいただいたご連絡先に追跡調査表をお送りします。ご協力いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

リスク・副作用について

がん標準治療は、がんの縮小や延命効果が認められた療法です。個人差はあれ、食欲不振、下痢、脱毛など副作用が現れます。
それに対し、NKT細胞標的治療は、現在、臨床研究段階にある治療法で、副作用はほとんど認められません。

副作用について

培養細胞を皮下注射した後に、倦怠感や発熱が起こることがありますが多くの場合は、38℃未満で2日以内に熱は下がります。また、ごく稀にアレルギー反応と思われる症状が表れることがあります。当クリニックでは注意深い観察をしながら治療を行い、そのような副作用が起こった場合は迅速かつ適切に対処いたします。
成分採血を行う際に、ごくまれに皮下出血、また緊張感からのめまい、吐き気、血圧低下が見られることがあります。また、血液の凝固を防ぐために使う抗凝固剤のクエン酸により、血中のカルシウム濃度が低下し、唇や手指のしびれ、つっぱりが出ることがあります。これらの症状が現れた時は、採取速度の調整、カルシウム濃度を調整する薬剤で適切に対応いたします。

NKT細胞標的治療の費用

当院のNKT細胞標的治療の費用は下記の通りです。

初診料(感染症検査費を含む) 50,000円(税込 55,000円)
治療費(初診料、感染症検査費を含む) 3,205,000円(税込 3,525,500円)
  • ※最初に当医院の指定の「NKT細胞標的治療の説明と同意書」にご署名いただく必要がございます。
  • ※同意撤回その他理由を問わず、細胞培養が開始された後においてはそれまでに掛かった培養費用の請求が発生します。
  • ※原料血液や再生医療製品である目的細胞の輸送にかかる費用は、治療費に含みます。
  • ※本治療方法は健康保険が適用されません。